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低音男の部屋

低音男の部屋

レコーディング初体験

3年位前のこと知り合いからCDを自費製作したいから手伝って欲しいとのは話がきた、僕とドラムの奴はゲスト扱いとのことでお金を出さなくてもいいから手伝って欲しいと言うことだった。僕は自分のバンドが諸事情で活動していなかった時期でもありレコーディングにも興味があったので参加することにした(決してゲスト扱いだったからではないしお金を出さなくてもいいからでもない)
1ヶ月程練習してからレコーディングすることになった。
その日から僕は密かに当日用のキメのフレーズを考え練習していた、ドラムの奴も似たようなことを考えていたらしい、この自分だけ目立とうとする姑息な考えが後に悲劇を生むとは思いもせずにニヤケタ1ヶ月を過ごした。
そもそもレコーディングなどの知識は本で見たこと位だった、だから皆無に等しい
「今のレコーディングってさぁ、128分音符とかの差し替えも楽勝で出来るらしいぞ」「じゃあ2~3テイクとってその中のいい奴を細かいミス差し替えればいいよな」などと余裕をぶっこいていたのだった
レコーディング当日スタジオまでの車中2時間は異様な盛り上がりを見せていた。
何故か全員プロにでもなったような気分だったのである。
スタジオに到着し挨拶,受け付けを済ませいざレコーディングルームへ・・・
想像してたのより狭いけどまあいいかなどと思いながらドラムのセッティングと
ベースの音決め。
いざ開始、当然ドラムからとると思っていた僕は「頑張れよ」などと笑みを浮かべながらベースを置こうとした、しかし、しかしそこで思ってもみないことが・・・
スタジオの人が「ドラムとベース一緒にとります」
「えっ?一緒にとるんですか?」
「はい、ドラムとベース一発録音です」
「え?じゃあどちらかミスったらとり直しですよね?」
「そうですね」
「でもベース差し替えとか出来ますよね?」
「う~ん、出来ませんね」
「え~っ、じゃあ,2~3テイクかは続けてとれますよね?」
「前のテイクは残せませんよ」
「・・・」
「それからドンカマ使いませんから」
僕とドラムの顔は青ざめた、自分たちが予想してたのとは全く違うのだから。
「いいですか?」「はい」僕とドラムは仕方なく準備にかかった。
顔は青ざめ体はガチガチになった。
1テイク目、途中まで順調だったがちょっとしたミスで取り直し。
2テイク目、また途中でちょっとしたミスでとり直し。
3テイク、4テイク~上手くいきそうでちょっと間違えて止まる。
どちらかが間違えたらとり直しなのだ二人とも緊張しまくり些細なミスを繰返す。
2時間が過ぎたがまだ終わらない、焦り,緊張、不安諸々がプレッシャーになり
押しつぶされそうになる。
休憩を取る。「なぁ、多少の間違いでも演奏続けんべ、でねぇど終わんねぇぞ」
「うんだなぁ」といった会話が交わされ再びレコーディング。
もうなんテイクだか覚えていないが3時間かかってやっと一曲終了。
「もうこれ以上上手く弾くことは出来ません」と言って多少のミスは認めてもらった
実はミスは考えてきたキメのフレーズだったのだ、やれる状況じゃないのにやってしまう悲しさ姑息な考えは良い結果を生まないことを身にしみてわかった日だった
次の曲は1時間半位で終わらせたが終わった時は二人ともボロボロだった。
帰りにそのテープを貰って車の中で聴いたがあの悪夢のような出来事が思い出されるのと自分のミスが気になり僕とドラムの奴は口が重かった。
行きとは反対にお通夜のようになりながら帰って来たのであった。
その後残りのパートと歌を入れCDは完成したのだがほとんど売れなかった。(製作者本人は喜んでいたのでそれはそれで良いのだが)
僕とドラムの奴は顔を合わせるたび「あんな思いするんだらもうレコーディングなんかしねぇ、たくさんだ」と言い合うのであった。
貴重な経験だったが本当に二度とあの思いはしたくない。


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